top of page

映画監督が「ヒーローズ・ジャーニー」を用いた研究コミュニケーションのストーリーテリングを紹介

  • Writer: TA OCRD
    TA OCRD
  • Mar 27
  • 5 min read

東京科学大学 教育革新センター オンライン教育プロジェクト(OCRD)は、2026年3月に「研究のためのストーリーテリングワークショップ」と題した2回構成のワークショップを開催しました。


本ワークショップは大学院生を対象とし、映画で広く用いられる物語技法を研究発表に応用する方法を探究するものです。3月16日に日本語によるオンラインセッション、続いて3月23日に大岡山キャンパスにて英語による対面セッションを実施しました。


本プログラムは、OCRDによるティーチング・アシスタント(TA)の専門能力開発支援、および教育・研究におけるコミュニケーション力の強化に向けた取り組みの一環として企画されました。


ワークショップの講師を務めたのは、金城学院大学専任講師で映画・CM監督の大澤広暉氏です。大澤氏はハリウッドおよび東京での映像制作の実務経験に加え、現在、東北大学大学院情報科学研究科の博士課程に在籍し、映像理解と視線追跡に関する研究を行っています。


大澤氏は映像制作の実践と学術研究の双方を活かし、物語の枠組みを用いて研究発表を構成する方法を参加者に紹介しました。


ファシリテーターは、OCRDのJeffrey S. Cross教授、山下幸彦教授、門松怜史特任専門員が担当しました。


3月16日:日本語ワークショップ(オンライン開催)


日本語ワークショップは3月16日にオンライン開催されました。参加者は事前に8枚のスライドを作成して臨みました。各スライドは、ダン・ハーモンの「ストーリーサークル」の8つのステップ――You(背景)、Need(研究の目的)、Go(研究ギャップ)、Search(研究方法)、Find(結果)、Take(限界・課題)、Return(次のステップ)、Change(研究の意義)――にそれぞれ対応しています。


参加者はこの構造を用いて自身の研究を物語として整理しました。さらに、より幅広い聴衆に向けた研究コミュニケーションについても議論が行われました。専門外の聴衆に対しては、学術的な関心だけでなく、研究の社会的な意義や価値をあわせて伝えることの重要性が認識されました。


ワークショップ後のアンケートでは、従来のプレゼン手法とは異なるアプローチに新鮮さを感じ、興味深く取り組めたという回答が多く寄せられました。フレームワークを通じて、自身の研究をより明確に他者に伝える方法を改めて考える契機になったとのコメントも多く見られました。また、研究における代償や困難に焦点を当てる「Take」の概念が、研究プロセスやそのより広い文脈を振り返るうえで有用であるとの指摘もありました。



3月23日:英語ワークショップ(大岡山キャンパス対面開催)


英語ワークショップは3月23日に大岡山キャンパスにて対面形式で開催され、約3時間にわたり3部構成で進行しました。


第1部では、Cross教授が科学コミュニケーションにおけるストーリーテリングの役割を概説し、ラトガース大学、プリンストン大学、MIT、コーネル大学など、ストーリーテリング手法を研究コミュニケーションに活用している海外の大学の事例を紹介しました。


続いて大澤氏が、ジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』やダン・ハーモンのストーリーサークルを引用しながら「ヒーローズ・ジャーニー」の物語構造を解説しました。具体例や教育動画を交え、多くの物語に共通する構造を示しました。


第2部では、参加者がScience Tokyoへの進学に至る自身の経験をフレームワークに当てはめて整理しました。8つのステップに沿って自身の物語を構成し、他の参加者と共有しました。日本への留学を決断した経緯、新たな文化環境への適応、留学中に直面した困難など、さまざまなテーマが話し合われました。


第3部では、フレームワークを自身の研究テーマに適用しました。大澤氏は、映像理解と視線追跡に関する自身の研究を題材に、従来のアカデミックなスタイルの発表と、より個人的な物語性を持たせた発表の2つのバージョンを提示しました。参加者は、異なるアプローチが聴衆の関心にどのような影響を与えるかを議論し、技術的な説明とストーリーテリングの要素をどうバランスさせるかを検討しました。


その後、各参加者がヒーローズ・ジャーニーの枠組みを用いて自身の研究を発表し、互いにフィードバックを交わしました。


ディスカッションでは、ワークライフバランスの維持や博士課程におけるプレッシャーへの対処など、研究に関わる個人的な課題について振り返る参加者もいました。大澤氏は、こうした制約は映画における物語的緊張と同様の役割を果たしうるものであり、研究プロジェクトの背景にある困難や動機をより鮮明に描き出す要素になると述べました。


ある参加者は、研究を物語として考えることで、自分が今直面している困難が発見に至る過程の一部であると認識できるようになったとコメントしました。


ワークショップ後のアンケートでは、満足度についても全員が「非常に満足」または「満足」と回答しました。参加者からは、「非常にインタラクティブだった」「異なるバックグラウンドの学生の視点を聞けたのが良かった」「学んだことをその場で実践できる形式が良かった」といった声が寄せられました。また、学会発表など公式な場面で研究に個人的なストーリーをどの程度織り込むべきかという点について、さらに深く議論したいという意見もありました。



まとめ


日本語・英語の両セッションを通じて、物語構造を研究発表に取り入れるアプローチは参加者から高く評価されました。ヒーローズ・ジャーニーのような枠組みは、研究の流れを整理し聴衆に伝わる構成を考えるうえで、新たな手がかりとなることが示唆されました。


技術的な内容だけでなく、研究者自身の動機や経験を物語に織り込むことで、専門が異なる聴衆にも届く発表につながるという手応えを、参加者自身が実感する場となりました。

 
 

Online Content Research and Development Project, CITL, Science Tokyo

東京科学大学 教育革新センター オンライン教育プロジェクト

EMAIL:

email.png
  • facebook
  • Instagram
CITL_logo
ScienceTokyo_LOGO-A_RGB_M.png

©2024 Online Content Research and Development Project, CITL, Science Tokyo

bottom of page